徒然映画評『ダークナイト ライジング』

敢えてTIF前夜に更新。こんばんはマックです。

最近ようやく映画観れてます。と言っても専ら家でDVD鑑賞ですけど。

キッズ・オールライト
「あぜ道のダンディ」
ダークナイトライジング」


この3つがここ数週間20本近く観た中でオススメできる3作品になります。
一番のオススメは断トツで「あぜ道のダンディ」ですが語るほどの知識がないのと自分がクリストファー・ノーランヲタということで今日は「ダークナイト ライジング」の感想を少しばかし。

【ヒーローの存在意義を揺るがした強敵ジョーカー戦から8年。ゴッサム・シティの治安は大富豪ブルース・ウェインことバットマンクリスチャン・ベイル)自ら地方検事ハービー・デントの悪行をかぶり、デントを英雄とすることでかろうじて保たれていた。だが凶悪なテロリスト、ベイン(トム・ハーディ)の出現によって、そんなかりそめの平和も終わりを告げる。さらに女泥棒セリーナ・カイル(アン・ハサウェイ)の働きにより、ブルースは致命的なダメージを受けることになる。】

公開前夜のレイトショー、PM23:30スタートの回にも関わらず既に満席の劇場。Vit様に超良席を早い段階から確保されていたのでで余裕の5分前来場。映画はトータル2時間20分強あっただろうか、"ノーラン版バットマン3部作”のラストとしては理想のクライマックスで幕を下ろしたんじゃないでしょうか。


ダークナイト」は、”悪”についての映画でしたが、本作は”悪”に寄りかかることで成立するような”正義”から、”真の正義”への脱却のドラマ。といったところだろうか。兎角、曖昧な定義付けをされるテーマをノーランなりの解釈で抉っていってます。

ライジングは前回、前々回を踏まえて観にかからないと全く何のこっちゃってなる程の情報量。序盤でデント法で悪が徹底的に排他される世界になったことが提示されたり、トゥーフェイスの一件もわかるようになっているも、そこから先は物語が進むと共に過去を振り替えっていく構成になっている為、前作を観たとしても、あれ何だっけかな〜?とシコリを残したまま置いてかれる事態に遭遇する。でも最終的には割とスッキリ出来るのでシリーズを追ってる人には返って好都合になってる仕組み。


今作はラストということでノーランファミリーが勢揃いしておりファンには嬉しい。中でも監督の前作「インセプション」にも出演したジョゼフ・ゴードン=レヴィットが今回非常に美味しいポジションで登場している。キーパーソンではないが、出番が無駄に多く、ラストも壮大にかましてる。軒並み評価が上がる彼とは裏腹にミランダ役のマリオン・コティヤールの評価はなんとも言い難い。なんというか、単に演技が下手で笑ってしまった。トム・ハーディは声が聞き取りづらくて参った。キャラクター上、仕方のない事だが最後まで耳が慣れることはなかった。ただ世界が燃えてゆくの楽しむヒース・レジャーのジョーカーとは違い、計算高く、判り易い”悪”を巧く演じている。鍛え抜かれた肉体にもウホッ←

IMAXカメラを贅沢に使った映像表現は相変わらずの奥行きと重厚感。アメリカ映画の中でも最高峰といってもいい雰囲気づくりのうまさにより、漫画っぽさはまるで感じないのは流石だ。むしろこの3部作を少年少女が理解し楽しむのは逆に難しい、完全に大人向けの、大人だけで見に行くアメコミ映画であることは確かだ。 今回優れていると思うのは、絶望感を観客に与えるストーリー。嘆きたくなる絶望を積み重ねた結果、後半にはもうどうしようもないほどの無力感をもって、バットマンの転落を見ることになる。ブルースの唯一にして最大の武器に直接攻撃をかけるべインのテロは、国際金融資本にめちゃくちゃにされたアメリカ庶民にとっては、なにより怒りを感じられるもの。これにより労働者階級の観客だれもが、大富豪の主人公に肩入れできるという仕組みと考えると恐ろしくなる・・・。

「罪のない人々なんてこの街にいると思うか?」や、「それは死への恐怖」や、「全てを与える」等には既視感を覚えるが、ゴッサムの上空を飛び回るバットがかっこ良いし、バットシグナルの点火には胸が熱くなる。要するに登場するメカニックが鳥山明ばりの魅力的なデザインとスピード感、躍動感で圧倒的な迫力を与え、我々を捻じ伏せる。終盤の失速とべインの動機が目に余っても尚、奇跡的な完成度を誇る前回を越えられないプロットだった事は言うまでも無かった。

フィンチャーと違ってあまり語られないが、ノーランも演出の基本がきちんとなっている。今回は如実に反映されていて、ブルースの修行パート、核爆弾のカウントダウン、署長の一念発起など、かなり大衆に向けたアプローチで良い意味でも悪い意味でも作品に花を添えている。フィンチャー信者としては顔面を歪んでしまう一幕もあったが個人的にはよく盛り込んでくれたと太鼓判を押したい。

力を失ったダークナイト。そんな最悪の状況の中でも立ち直るためにもがく姿。はたして破れた星条旗は復活するのか。アメリカは世界の最前線に戻ってくるのか。 一生来なくていいし、どうでもいいとも思うものの、映画自体は大ヒット間違いなしだろう。前作からは大幅に落ちるものの、やはり見逃せない。そんな完結編である。"ダークナイト2"or"ノーラン版バットマン完結編"2つの観点で観てみるとより楽しめるかも。近いうちにもう一度劇場に足運んだ際はそうやって色々勘ぐらせることにする。