BEST DISC 2014 [20~1]

 
 
 20. iDOL Street ストリート生コレクション2013~2014 / iDOL Street ストリート生
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アイスト枠で入れるならこれしかないでしょう。4枚組として無理やりランクインさせてみました。騒がしい現場とは一線を画するピュアでストレートな楽曲が満載。スト生楽曲のひとつの定義でもある、《オタクひとりひとりの物語にオーバーラップする号泣トラック》が今作も健在。NAGOYA Chubuが歌う「恋のキャットファイト!~ご主人様争奪戦~」は、ある意味での到達点、アイストの前衛的な一面も覘ける意欲作。
 
 
 
 
19. Best. Absolute. Perfect / B.A.P
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とにかくZELOくんの1秒あたり16音節の”LTEラップ”が好きすぎる。HIP HOPを軸にした骨太で硬派なアプローチを武器にギャングスタラップやメロウな楽曲にも挑戦していて、「1004 [ANGEL]」ではハウスビートにフォーキーなテイストとロックの要素を絶妙に融合させB.A.Pの音楽的力量と無限の可能性を見いだすことができる。それでも歌詞は例のように恋愛を綴っているのだけど、GOT7とは違い、ブラックミュージックへのリスペクトに溢れておりそこのバランスが絶妙。少年から青年へと変わりゆくZELOくん(18)に今後注目していきたい.。
 
 
 
 
18. 25 / 花澤香菜
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渋谷系の甘いメロディーラインと偶像崇拝される可愛くて甘い歌声の組み合わせが素晴らしくないはずがない。北川勝利、沖井礼二、宮川弾といった豪華すぎる作家陣はポップスを歌わせるにとどまらずラップやラテンジャズ、シューゲイザーも歌わせているのが最高。前作とは違い、色鮮やかなトラックに花澤さん自身が歩み寄って作り上げられていて、坂本真綾以上の片鱗が見え隠れする。そして、なにより、彼女のルックスと声はめちゃくちゃタイプだ。
 
 
 
17. Pale Communion / Opeth
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2014年のOpethは70年代ロックに傾倒したような前作からの流れで、今作も古き良きプログレッシブロックの感触に包まれている。アナログ的なドラムサウンドに鳴り響くオルガン、ミステリアスなピアノややわらかなフルートの音色に、バックにうっすらと響くメロトロンは実に美しい。ミカエル・オーカーフェルドのジェントルな歌声もいよいよ含みを増して、繊細な楽曲をマイルドに彩っている。デスメタル的な激しさはほとんどないけど、緩急のついた展開と、テクニックのアンサンブルは、プログレメタル系のリスナーにも充分楽しめるはず。
 
 
 
 
16. I'm Your Boy / SHINee
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 今年のSMエンターテインメントの顔EXO、世界最新型の音楽をしたSuper Junior、王国の王者としていまだ圧倒的支持率を誇るTVXQ、そんな多種多様なSM勢の中でも一番日本人好みなのがSHINeeだろう。日本デビューしたK-Popスターで唯一のジャニーズにみられるクールとキュートの使い分けができるのが彼らであり最大の魅力。最も日本向けのコンテンツなのだ。"おもちゃ箱をひっくり返したようなポップでカラフルな楽曲"、この形容されまくったコピーが、もしかしたら本作が世界で一番似合うんじゃないかと思うくらいの煌めきが内在され、ラップやバラード、ロックなナンバーと聴き応え抜群な内容となっている。全編日本語で歌われているのだけれど、ガンギマってる韓国語ver.と違い、日本語はとにかく可愛い。稚拙なライミングは母性を擽るのか。メンバーのTeminは今年ソロでもリリースしそちらは遺憾なくラップを披露している。いわゆる、ギャップ萌えで完全に心奪われた次第だ。そんな格好可愛いK-PopスターによるJ-Popは最高に楽しい。
 
 
 
 
15. Lil' Boukou in Your Cup / Boukou Groove
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ピーター・バラカンのラジオをなんとなく聞き流していたとき、彼らの曲が流れた瞬間、久々に電流が体中に走ったのを覚えています。ジョン・クリアリーのバンドで初来日したギタリスト、ダーウィン “Big D” パーキンズとフロリダのキーボーディスト、ドニー・サンダルが2010年に結成したユニット。品が良く洗礼されたニューオーリンズのファンクで気持ちのよいグルーヴを堪能できる、素晴らしいアルバムです。
 
 
 
 
14. Art Official Age / Prince
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 ワーナー復帰作だというのに、この素っ気なさ。でもプリンスも今更ながら、手垢のついた世評からの解放を求めているかのよう。この新譜は久々と言っていいかどうかわかりませんが、「あの頃」のプリンスを感じさせてくれました。プリンスといえばやっぱり「Lovesexy」までかなぁなんてことを多少思っていたのですが撤回します。聴けば聴くほど好きになっていきました。今後何度も聴き返すことの出来るアルバムだと思います。やっぱり、泣けるんですよね、なぜか…。しばらくはいつものプリンスのアルバムと同様、泣きそうになりながらこのアルバムを聴くしかありません。CDをかけるといつもそばにプリンスがいて私に歌ってくれることで私は何度も慰められ、励まされ、癒され、救われました。音楽を聴く喜びをプリンスは教えてくれます。プリンスはやっぱり今でもプリンスだ!プリンス好き好き好き好き好き好き好き!
 
 
 
 
13. Indie Cindy / Pixies
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「Doolittle」が放つ高揚感や狂気さは、生涯これ以上の作品に出会うことは決してない。言ってしまえば、あの頃のPixiesのレベルには、到底及ばない。バンドのリズムの中核を担っていたキムが脱退し物足りなさもある。これはもう仕方ないのかもしれないのだけれど、やはり彼ら特別な存在。ソロ活動を経て良メロ感を増したメロディに、しっかりダイナミックさのあるバンドサウンドで一曲一曲が耳に残る。オルタナ系ロックバンドのお手本といっていい作品だと思いました。Pixiesの醍醐味である、激情を迸らせながら追求する轟音、歪み、軋みとポップの融合も色濃く残っている。過去のヴェールを脱ぎつつも、飾りない今のモードを素直に表現していました、mbvの22年を超える、23年ぶりのナイスカムバック。
 
 
 
 
12. High Life / Eno & Hyde
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イーノ&ハイド名義の2作目。前作は英国的な叙情的サウンドのポップス寄りのサウンドであったが、今回は、イーノがかつて関わったトーキングヘッズのリメインライトやデビッドバーンと組んでやったブッシュオブゴースツ路線のファンキーなカッティングギターとアフロリズムが主体。今年WARPがリリースしたどの作品よりもミニマルでダンスミュージックしていると思ったのが正直なところ。決してアンダーワールドのようなコンテンポラリーなクラブミュージックな訳ではないのだけれど、実験を重ね構築したサウンドは緻密でいて、かつシンプル、必要最低限の音で、鮮やかで奥行きのある空間を生みだしている。エクスペリメンタル・サウンドでありつつ機能美という言葉もハマるような感覚。これでいて準備に約2週間、録りに5日間というスピードで作ったって言うんだから、ダレン・エマーソンもびっくりだわ。
 
 
 
 
11. Black Messiah / D'angelo and The Vanguard
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ディアンジェロの新譜に纏わる都市伝説、今日もいつものように世界中のブラックミュージックファンが噂話のタネしていたある日、突如としてアナウンスされた『Black Messiah』のリリース。ついに都市伝説が本当の伝説になる時がきたのだ。14年の沈黙を破り、メディアが口を揃えて言う、”ファーガソンでの黒人青年射殺事件を機とする社会不安がアメリカ全土を包んだこの2014年、最高のタイミングでの帰還。” まさしく全米の黒い救世主となった訳だ。細く繊細なファルセットと、極限まで無駄をそぎ落とされたシンプルかつドープなサウンド、そしてQuestloveとPino Palladinoらお馴染みのリズム隊による即興的で濃厚なグルーヴはいまだ健在。P Funkであったりジャジーにキメてくるトラックもあり、全体的に響き渡る漆黒のベースは脳幹を刺激する。また10年あまりかけてこの中毒と付き合っていくのかと考えるとそれはそれでいいかと思えるほどに今作もVoodoo同様、禁欲主義的な自慰促進盤となった。
 
 
 
 
 
10. Grenier meets Archie Pelago / Grenier meets Archie Pelago
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 ストリングス+ サックス+PCという編成からなるニューヨークのトリオ、もともと様々なジャンルのビートを取り入れた作風のArchie Pelago、幅広いジャンルのエレクトロニック・ミュージックを制作してきたGrenierとの美しき邂逅です。両者の音楽に対する開けた姿勢が合致し制作されたアルバムはエレクトロニカフューチャー・ジャズ~テクノ~ベース~アバンギャルドサイケデリック~ニュー・エイジと、どのジャンルにも当てはまる先進的かつ先鋭的なエクスペリメンタル作品に仕上がってます。Four tetやNicolas Jaarに代表される新世代のエレクトロニック・ミュージックのそのさらに先を行く才能にただただ脱帽。心落ち着かせるアンビエントな楽曲から、液体のような滑らかに流れるグルーヴの曲、うなるベースラインが体を揺らす曲などアルバムトータルの完成度がずば抜けたマスターピース
 
 
 
 
 
9. The Season / FEBB
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東京のインディ・レーベル〈WD Sounds〉と〈Pヴァイン〉のダブル・ネームでリリースされたこの作品は2014年の日本語ラップ最重要作の1枚となった。 febbのラップの特徴は、その言葉のぶつ切り、そのリリックの断片が感じかたによっては、いかようにも鈍い光を放つような印象を与える。彼のラップは不思議で、地味ではあれど、聴けば聴くほどに味わい深い。 彼のラップに対するアティチュードは硬く、踏まれても割れない何年もそこにあった岩の様だ。どこかニューヨークのヒップホップ黄金時代を築き上げた往年のリリシスト達に通じるものがあるんだよな。サイケデリックで、ソウルフルで、ジャジーで、ファンキーな、素晴らしいハードコア・ヒップホップであることに間違いない。
 
 
 
 
 
8. World Peace Is None Of Your Business / Morrissey
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道を開けろ、偉大なるモリッシー様のご帰還だ。いわゆる、モリッシーらしいギタポな曲は見当たらず、へヴィで派手なアレンジが目立つ。それでもモリッシーたらしめる何かを感じ涙した。何年か前にキャメロン首相が学生時代にスミスのファンだったことを公言したらば、モリッシージョニー・マーが怒り狂ったというニュースがあった。モリッシーのファンを認めない理由が、「キャメロンがキツネ狩りを解禁したのが許せない」だったので思わず笑ってしまった。彼は政治思想の人ではない。純粋に感情の人だ。「肉食をする人間は俺の音楽を聴くな」とか真剣に言いそう。そして、今回のタイトル「世界平和など貴様の知ったことじゃない」である。モリッシー大好きかよ!「死ぬ運命なら、死ぬだけ」とかそんな寂しいこと言わないでまだまだ変なダンスしてくださいな、来年あたりにでもセクゾンに会いに来日してね!
 
 
 
 
7. ナマで踊ろう / 坂本慎太郎
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 もうこの人のやる音楽ってズルいです。前作「幻とのつきあい方」で改めて坂本氏の才能を実感したのは言うまでもなく、そして本作でもその才能は遺憾なく発揮されている。前作に比べると全体的にどんよりとした空気感が漂うものの、不思議と耳を傾けていても暗い気分にならずに済むのは坂本マジックという、ある種の魔法のようなものだろうか。アルバムコンセプト自体は『人類滅亡後に流れている常磐ハワイアンセンターのハコバンの音楽』という独創的なもので、リアリティが簡単には感じられないものに対してリアリティを吹き込んでいる。ミドル~スロウの楽曲が中心となり作品を覆う中で気づいたのは、人類滅亡という重い題材の中で生きている、言い得て妙なリゾート感。これは軽快なギターフレーズしかり、小気味の良いアフロなリズムが象徴。全体通して聴いて思ったことはと言えば、坂本氏は例えどんな音楽を作ろうと坂本氏であるということ。音楽を通してバックボーンがしっかりと根を張って揺らぎ無い点。歌声しかり、フレーズ選び、サウンドプロダクション全てが、坂本慎太郎ということに気づかされる。それほど特徴的であり、唯一無二の孤高の存在なのだ。
 

6. Awake / Tycho

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 まずジャケットが格好良いいですよね。メンバーのScottはISO50という名義でデザイナーとしても活動し、その秀逸なセンスは音楽ファンに留まらず支持されているらしい。そして今作のアート・ワークは彼自身によって手掛けられているそう。本作はシンセ、ギター、プログラミングのScott Hansenを中心に、ベースとドラムを加えてトリオ編成での録音。全体的に曲がバンドサウンドが強くて、でもTycho本来のレトロなテクノメロディーは損なわれていませんでした。もちろんこれまでの延長線上の、レトロ・テイストのリヴァービーで浮遊感に満ちたサウンドであるが、生演奏の度合いが高まったため、ポストロック的なテイストも感じさせる。どうも私は生音と電子音が合わさるとジャンキーになるようだ。アンビエント的なアトモスフィアを纏いながらもドライヴィンな高揚感を持つサウンドを構築していく。ドリーミーな質感はそのままにオーガニックな彩りを増しており、見事バンドサウンドとの共存に成功したといえる。エレクトロニカアンビエント、ドリームポップ、ポストロックと幅広いクラスタに受け入れられることは間違いないでしょう。来年早々の公演はド平日だけど余裕の有給で最前でトリップしてきます。

 
 
 
5. STARTING OVER / Dorothy Little Happy
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 今回のドロシーはストーリー仕立てでまるでひとつの映画を観ているような素敵な作品となった。メンバー1人1人の個性が活かされ、思春期の揺れ動く少女の心の描写を挟みながら、瑞々しく真っ直ぐな彼女達の今が刻み込まれているように思う。奇を衒うことなく、アイドルの良心が詰まったと表現したくなる曲が揃っており、大いに興味を引くのだ。アッパーなものから四つ打ちナンバー、バラードまで彩り豊かな曲調で支えられ、特定のメンバーにスポットも当てながら大きな果実を実らせたJ-POP/アイドル・ポップスが鮮やかに耳を奪う。曲順もメンバーの考案で構成されており、これが恐ろしいくらいにひとつの物語として成立している。『Life goes on』がドロシーが主役のドキュメント作品だったとすれば、『STARTING OVER』はドロシーが織り成すノベライズ作品なのではないだろうか。音楽面では、COZZi氏が軽快に踊らせ、全体の骨格を磯貝サイモン氏が担い、アクセントとしての坂元サトル氏によって構成され、絶妙なバランスで配置さていて、アクセントとしてのサトルさん曲が良い意味でアクが強く様々な解釈を誘うスパイスとして『STARTING OVER』を盛り上げている。ポップス、ロック、バラード…幅広い楽曲は、曲名からも読み取れるように、とにかく色彩豊かだ。曲順がもたらすストーリー性は、それこそ”早く次のページをめくってよ”と言いたくなる。新しいトラックが始まる度に見えてくる表情に涙し心踊らせるアイドルポップス至極の名盤。
 
 
 
 
 
4. 時が奏でる / 蓮沼執太フィル
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 醸し出し、解き放つ音像。フィルハーモニーという編成でありながら重すぎない。そんな感触が心地よい、蓮沼執太がコンダクトする現代版フィル・ハーモニック・ポップ・オーケストラのファースト・フルアルバム。メンバーは、ドラム&映像の特殊編成トリオ「d.v.d」のitokenとJimanica、一定に留まらないジャンル展開を見せるSSW木下美紗都、音楽批評誌「EsPresso」の編集・批評活動に始まり、サックス・エレクトロニクス奏者として名を残す大谷能生、音楽作品のみならずイベント・舞台作品での表現も盛んなラッパー環ROYなどなど、実に多種多様な分野から集まっている。この点はLee PerryJ DILLA、さらにはスティーヴ・アルビニSHELLACから細野晴臣に至るまで、広がりのある影響を公言する蓮沼ならではの人選ですね。ここまで幅広いと演奏や楽曲コンセプトが複雑化し、即興的な試みをイメージするかもしれない。だがその心配は、一曲目を聴き終えるころには杞憂となる。楽曲全体の進行は非常に練り込まれながらも、抑揚は明瞭。オーケストラルな構築が前面にくるかと思えば、つま弾かれるギターや軽快なラップ・リリックが要所要所で織り込まれていく。数多くの楽器を的確に組み合わせ、繋ぎ合わせる。その合成感覚が見事に研ぎ澄まされている。大編成での演奏は、荘厳な印象でなく多彩な色合いを見せる手段としても成り立つ。それはこの楽団が今回の音源によって、最も端的な形で表したといえるだろう。暖かい男女ヴォーカルと、それと対照的な環ROYのクセになるラップが混ざり込む。もしジャジーポップなどが好きならば恐らく気に入ると思いますが、実にポップスとして完成度の高い作品に仕上がっています。
 
 
 
3. Atlas / Real Estate
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とろけるような音の質感に、まどろみ重なり合うツインギターの旨み、一歩引きつつ曲全体を締めるリズム隊。さっぱりな口どけながら洗練されたクリーンなサウンドを掲げて録音されたそのサウンドは、Wilcoの「Yankee Hotel Foxtrot」が一つの指標になったようだ。成る程、最高なはず。とにかく今作の第一の魅力はこの霧がかった、それでいて陰鬱でない、朝もやのような音像。5人体制に変更されているが、サウンド的には大きな変更は無く、ラブリーでドリーミー、そしてナチュラルなポップロック。囁くようなジェントルなボーカルに、浮遊感あるバンドアンサンブル、美しく多彩なギターアルペジオの音色が重なり合う繊細でいて自然体。また、前作よりもギター、ベースのメロディが自由かつ繊細で楽しいのがポイント。それら弦楽器のメロディと、歌メロがゆらゆらと離れたり、重なったりして、そういったバンドのセンスが更なる聞き心地の良さに繋がっているよう。地味な変化ながら前作よりも一層音が美しく描かれている。懐かしくも有り、どこかモダンでクール。確固たるメッセージ性も特にない。だが一曲目の飽きさせない展開といい、少しけだるいボーカルといい、これでもかと自分のストライクを突かれてしまいました。バンドサウンドとベッドルームミュージックの心地よさを同時に体感できる1枚。
 
 
 
 
 
 
2. Minutes of Sleep / Francis Harris
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 本作は張り詰めたアンビエント・ノイズでスタートする。"Hems"、そして"Dangerdream"は共に、Greg PaulusによるトランペットとEmile Abramyanによる悲しげなチェロが奏でられる陶酔してしまいそうなドローン作品だ。そしてここから"Radiofreeze"を通じて、よりリズミカルな形へと展開していく。Harrisは自身の悲しみを崇高なものへと高めようとしており、用られているサウンドの中で1番シンプルななものでさえ幾重にも重ねあわされ、簡単に理解できるようなものではなくなっている。従来のハウスらしいハウス・トラックは、本作において大理石で出来た繊細な柱のように機能しており、キック・ドラムが力なく打ち付けされる"Me To Drift"や"What She Had"の他に、キックが宙を舞っているかのような"You Can Always Leave"これが最高に気持ちいい。
彼はこの3年間で両親を失った。悲嘆に暮れる複雑な心境を描いた今作で、彼は本当に成熟したと言えよう。安易に感傷的になったりドラマっぽくなることはなく生々しいエモーショナルな重みをダンスミュージックに注入したこの鮮烈なアルバムにとって、エンディングにかけてのトラックは困惑するものかもしれない。『Minutes Of Sleep』が表現しようとした感情は非常に複雑に入り組んだ悲劇的なものであるとともに希望になっていくと信じたい。
 
 
1. Familiars / The Antlers
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USはNYマンハッタン出身、現在はブルックリンで活動するインディ,スロウコア,ドリームポップバンドの5th。前作「Burst Apart」では同じくブルックリン勢のGrizzly BearやUKのWild Beastsなどの動物系インディバンド同様ドリーミングなインディポップスを展開、ピッチフォーク含む各メディアで概ね好評を得ていた彼らですが、Beach Houseの名盤「Teen Dream」「Bloom」やYYYs,TV on the Radioなどを手掛けたChris Coadyをプロデューサー,エンジニアに迎えたこの新作「Familiars」において新たな境地を切り開いている。それはTrue Widowの最新作ほどダークではないもののスロウコアの要素を取り入れた結果、ドリーミングな感覚はそのままに過去作以上にゆったりとトリップ出来ちゃうような心地よい作風へと変化。
ゆったりとしたホーンの音色にPeter Silbermanの時に切なく感情的なファルセットヴォーカルが合わさり、ぼんやりと夜空を眺めているようなドリーミング極まりないリードトラックにして名曲クラスの1. Palaceからして前作以上にスロウな感覚を強めていることが分かる。続く2. Doppelgängerでは更に繊細なサウンドを奏で、ジャジ―なサックスを溶け込ませてしみじみとした気分にさせてくれる。温かみのある動物系インディフォーク路線の3. Hotel、穏やかなジャズインディからポストロック的な流れでもって鮮やかに音の強さが増していく5. Director、チェンバーロックな音の温かみに優雅なジャズ演奏がエレガンスに絡んでいく6. Revisited、Grizzly Bearあたりを彷彿とさせるインディフォーク路線な7. Parade、ラストの9. Refugeも優等生らしくジャズ絡みの穏やかなナンバーで終始黄昏るような繊細なインディフォークでとても癒された作品でした。